みなさんこんにちは!今回はアメリカ生まれ、そして2018年現在は埼玉製作所寄居工場で生産されているスポーティなセダン、ホンダ・シビックセダンをご紹介します。スポーティなイメージがさらに強いハッチバックや、サーキットでの走行性能を高めたシビック・タイプRが存在する今、あえてシビックセダンを選ぶ理由はどこにあるのでしょうか?その魅力にじっくりと迫っていきたいと思います。
ホンダのスポーツイメージの担い手、シビック
ホンダのスポーティなイメージを古くから引き受けてきたクルマのひとつが、シビックです。直列4気筒をフロントに搭載した前輪駆動車(かつては四輪駆動車も存在)という点は1972年に登場した初代モデルから一貫しており、3ドア・5ドアのハッチバックと4ドアセダンを基本に、代によってはクーペやワゴンなど幅広いボディバリエーションを誇ります。
日本での販売は、2010年12月に8代目モデルの生産がストップしてからしばらく途絶えていましたが、海外向けの生産・開発は継続して進められていました。そして2017年の夏、約6年ぶりに10代目モデルをベースとした4ドアセダン、5ドアハッチバック、そしてタイプRの日本市場復帰を発表。2018年現在まで生産が続けられています。
ホンダの、そしてシビックのスポーツイメージを高める原動力となったのが、VTECと呼ばれる可変バルブタイミング機構を備えた直列4気筒DOHCエンジンと、タイプRと呼ばれるスポーツモデルの存在です。自然吸気ながらリッターあたり100馬力を超える出力を絞り出す高回転型エンジンを搭載し、日常での使い勝手を最低限残しつつスパルタンな走りを実現したタイプRは、国内外で熱狂的なファンを生み出しました。
今回の主役・シビックセダンも、シビック・タイプRとは関係の深いモデルです。そのあたりも後々解説していきましょう。
現行国産車ではめずらしいモノグレード構成
現行シビックのモデルタイプは大きく分けて3種類。4ドアセダンと、5ドアハッチバック、そして5ドアハッチバックをベースに走行性能を高めたタイプR、となります。4ドアセダンのベースになったのは北米仕様ですが、生産自体は冒頭で触れたとおり、ホンダの埼玉製作所寄居工場で行われています。それでいて、車両本体価格を約265万円に抑えたられたのは、ホンダの企業努力のたまものといってよいでしょう。
ちなみに5ドアハッチバックとタイプRの生産国はイギリス。5ドアハッチバックは4ドアセダンに比べて約15万円高の約280万円から、タイプRは別格のモデルとして約450万円のプライスタグが掲げられています。
参考:セダンの買取専門ページです
3種類の大きな区別はあるものの、4ドアセダン、5ドアハッチバック、タイプRそれぞれはグレード分けされておらず、モノグレード構成となっています。子細にグレードを設定し、ユーザーのニーズにきめ細かく応える、という戦略が当たり前の昨今、非常にめずらしい販売戦略と言えるでしょう。
シビックセダンを購入しようと考えた時、ユーザーが選べる選択肢は、ほとんど残されていません。ホンダ・センシングを搭載するか否か、ホイールを16インチか17インチにするか、標準のファブリックシートにするかオプションのレザーシートにするか。選択範囲の少なさは、標準の状態でも「クルマができあがっている」とする、ホンダの自信のあらわれかもしれませんね。
奇をてらうことなく、堅実な設計で実現した走行性能の高さ
現行型シビックセダンの大きな特徴のひとつが、「歴代モデルで初めて、標準モデルとタイプRのシャシーを同時開発した」という点です。今までのシビック・タイプRは、すべて「標準モデルを元に、各部を補強・強化」というふうに、あくまで標準モデルをベースにした開発が行われてきました。今回初めて同時に開発を行ったことで、タイプRはより実用性を高めることに成功し、標準モデルの4ドアセダンと5ドアハッチバックに関していえば、走行性能を飛躍的に向上させることが可能になりました。
今回Cセグメント用に新しく開発されたプラットフォームは、「低重心・低慣性・軽量・高剛性」をキーワードに開発。最初からタイプRまで使用することを念頭に開発されたシャシーは、標準車では十分すぎるほどの剛性を確保。徹底した低重心化も計られた結果、地を這うような走行フィーリングを実現しています。具体的な数字でいえば、セダンでは先代9代目に対し、22kgの軽量化を達成しながら、ねじり剛性は25パーセント向上させています。
シビックセダンは、5ドアハッチバックに比べて130mm全長が伸ばされており、使用タイヤの銘柄の性質もあって絶対的なグリップ性能やコーナリング性能は低いものの、より優れた静粛性と穏やかな乗り心地を実現。実は4ドアセダンの方が全高が20mm低く、車重も50kg軽くなっていて、シビックセダンの大きさや用途を考えれば、十分に「スポーティ」と呼べる仕上がりになっています。
安全性についてもぬかりなし
シビックセダンに搭載されるエンジンは1種類で、トランスミッションもCVT1種類のみとなっています。駆動方式をFFのみとしたことも、ここまで新車価格を抑えられた理由のひとつかもしれません。
搭載されているエンジンは、レギュラーガソリン仕様のダウンサイジングターボ。1.5リッター直列4気筒DOHCターボから最高出力137ps、最大トルク220Nmを発生します。車重は1,300kgと、大柄な車体にも関わらず軽量に仕上がっているおかげで、力不足を感じることはほとんどありません。5ドアハッチバックと比べると9psダウンとなっていますが、セダンの方が50kgほど軽量なので、どの速度域からも軽快に加速できる能力を備えています。
安全性に関しても、現代のクルマと呼ぶにふさわしい装備となっています。ホンダ・シビックセダンには標準で先進安全装備「Honda SENSING」を搭載。ミリ波レーダーと単眼カメラで前方の状況を認識し、事故回避の操作支援や、安全・快適な運転をサポートします。また、コーナリング時にブレーキを細かく制御することによって、旋回時のライントレース性や回頭性を向上させるシステム「アジャイルハンドリングアシスト」を装備。さらに、歩行者との接触を感知すると自動的にボンネットフードの後端をリフトアップし、衝突してしまった歩行者の頭部への衝撃をやわらげる「ポップアップフードシステム」も搭載しています。
他にも、夜間の視認性を高めるLEDヘッドライトや、降車時にキーを持ったまま1.5m以上離れると自動的にロックがかかる「降車時オートドアロック機能」など、多彩な装備でユーザーと周囲の人々の安全を守ります。
ハッチバックやタイプRもある中、あえてセダンを選ぶ理由
シビックセダンのトランク容量は519リッターと、かなりの大容量。さらには後席も6:4の分割で倒すことができるため、かなりの長尺物も積むことが可能です。パッと見はそれほど大きなトランクを備えているようには見えないのですが、ゴルフバッグを4つ積み込んでの4人乗車も楽々こなせる実力を備えています。
ハッチバックやタイプRに比べてシビックセダンが明確に優れている点は、乗り心地、静粛性、燃費、価格の4点です。16インチに装備されるタイヤは静粛性に優れるミシュラン・プライマシー3で、とろけるような、しっとりとした乗り心地も実現。また標準の16インチ、オプションの17インチのホイールは、どちらも中空構造のレゾネーター(消音装置)を持つ「ノイズリデューシングアルミホイール」となっていて、ロードノイズの低減に大きな役割を果たしています。
燃費はシビックセダンの標準車で19.4km/l、ハッチバックのCVT車で18km/lとわずかにリード。ホンダが「リアルスポーツカー」とうたうタイプRは12.8km/lとなっています。また、18インチホイールのハッチバックやハードなタイプRと比べて、落ち着いた乗り心地のセダンの方が普段使いには向いているでしょう。とはいえ、それはハッチバックやタイプRと比べての話。新プラットフォームの恩恵で、セダンとしてはかなりの低重心の部類に入るため、全体的な乗り味としてはスポーティにまとめられているという、絶妙なセッティングとなっています。
そして、最後は価格です。現行シビックの中で最もリーズナブルなクルマがシビックセダンなのですが、内容を考えたらかなりのお買い得といってよいでしょう。扱いやすく実用的で、走りにも妥協のないシビックセダン。現行セダンの選択肢が少なくなってきている今、走りにこだわる方にぜひおすすめしたいセダンです。それでは、また次回お会いしましょう!
[ライター/守屋健]