シルビアといえば1965年から2002年まで(初代から2代目の間は生産が中断され約7年の空白はありました)販売されていた言わずと知れた超有名モデルですね。この長きに渡ってFR方式、クーペスタイル、2ドアという点を貫いたのでそれ以外の車種では存在しません。当時大流行していたスペシャルティカーですが、その中でヴァリエッタと呼ばれているのが7代目である2000年に登場したクーペガブリオレのオープンカーモデルです。シルビアはずっと5ナンバーでしたが、先代にボディサイズをアップさせ3ナンバーで迫力満点のボディに変更させましたが、慣れていないとやはり扱いづらく特に若者たちにあまり受けなかったのでこの7代目で5ナンバーに戻したことは7代目の大きな特徴と言えそうです。
ヴァリエッタはオーテックジャパンと高田工業で共同開発されました。シルビアの長い歴史の中で最後の最後に約2年という短い期間発売された一癖あるヴァリエッタは一体どういうモデルだったのでしょうか。
国産では初めてのフルオープンタイプ電動メタルルーフ
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まずなんと言っても国産で初めてフルオープンタイプ電動メタルルーフが備え付けられていたのがこのヴァリエッタでした。ヴァリエッタが出てからは国産車でもフルオープンタイプ電動メタルルーフがちらちらと見受けられるようになったので、日本車の歴史においても大切なモデルと言えそうです。やはりメタルでボタン一つでさくっと開けたり閉めたりできるのはスマートで便利です。オープンカーに興味ありながらも開け閉めが大変そう…としり込みする女性にも、受け入れやすく手軽にオープンカーを楽しめることでしょう。オープン状態にしなければオープンカーであることも気付きにくく、美しいクーペシルエットです。(中にはソフトトップで閉じていてもオープンカーであることを気付いてほしい!という方もいらっしゃるかもしれませんが…)
閉じている状態も美しく、静粛性も一般的な車と同じような感じです。やはりソフトトップではこうはいきません。
心地よい走り
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ヴァリエッタには5速MTと4速ATの2種類があり、搭載されているエンジンはSR20DE型のみとなっています。ちなみに最高出力はATが160PSとMTは165PSと出ています。またシルビアには日常で使うことに重点を置きつつもスポーティさを大切にしたスペックSと、バチバチにスポーティーでサーキット走行もできるように作られたターボ仕様のスペックRがありますが、ヴァリエッタはスペックSのみとなっています。
走りそのものはほどよく剛性が高いながら、よいしなやかさもあると言ったところです。もう販売終了してから20年近いということもあり、今も大丈夫なのか心配な点ではありますがやはりシルビアそのものがしっかりとした作りになっており、しっかりメンテナンスをしていれば元気に動きますし、日本車のレベルの高さみたいなものを改めて感じずにはいられません。
参考:オープンカー/カブリオレ/コンバーチブルの買取専門ページです
本格的にという方はMTとATとしては、どれだけ荒い道を通るのか、攻めた運転をするのかという部分によってきますが、正直一般的な道、一般的な高速しか乗らないのであればATで十分だと思います。明確な理由があれば別ですが、ATで楽でありながら肩の力を抜いて気持ちよくのびのび運転できる方が個人的には良いかなと思います。
またオープンカーとしての観点で言うと、風の巻き込みが少なめなのもよい点です。サイドウィンドウを上げていたらもちろん少ないですが、状況にももちろんよりますがサイドウィンドウを閉まっていても強すぎず心地よい風が流れてくれます。強い風による苦痛はなく、爽快感だけを味わえます。そういう点もデートカーとして髪型が気になる女性には(?)大切なポイントであるような気がします…
またオープンカーならではの走りの点で言うと、オープン状態にしていると
味わい深いインテリア
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ヴァリエッタはインテリアは派手ではないですが、しっとりと味わいがあり趣があります。まずフロントシートは帝人と川島織物が共同開発したモルフォトーンクロスシートが使われています。モルフォとはモルフォチョウからきており、そのモルフォチョウは羽が非常に美しく光りを反射するのですが、その反射の仕方も角度によって違っていて見てて飽きず、世界で一番美しいチョウと呼ばれていたりもします。そのモルフォチョウの鱗紛の発色原理をヒントに開発された繊維を使った生地が使われています。ピカピカに目立つというほどではありませんが、滑らかな反射と光沢は普通のシートと一味違い、オープン状態にしていると周りにもシートが一味違うことが伺え、ちょっと自慢気な気持ちというか、シートの面でもオープンにするのが誇らしげになりそうです。もちろん座り心地も良く、気持ちいいホールド感で疲れにくいです。もう一つ選択肢としてシートヒーター付きの本革のブラックシートがあります。少し寒い日でもオープンにして運転が楽しめそうです。
一応4人乗りですが、リヤシートは究極的に狭いです。子供でも狭いと感じそうなくらい狭いです。たまに誰かを送る、いざという時程度であれば我慢できそうですが、日常的に4人で乗るのはおすすめできません。というか無理と言っても過言ではないと思います。またトランクですが全く載せられないというわけではないですが、ほとんど載せられないという認識でいた方が良いと思います。そのためリヤシートを荷物置きにして2人乗りとして使うのが一番良い気がします。
シルビアヴァリエッタは遊び心満載
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現在は昔のように見た目や遊びゴコロ、嗜好よりも、実用性を重視している方向にあるのでこのヴァリエッタは正直今は時代にそぐわないでしょう。しかしシルビア、ヴァリエッタのような車が中心でこういう車が必要されていた時代学校あったのです。そういうことを考えると車にも波と歴史があり、だから新しい車が生み出され、様々な理由で生産終了した車があっても必ずその車を愛した時代と人がいて、年式が高い車でも地球上のどこかに残っていてまた誰かの人生を変えているのだろうか…と思うとやはり車のロマンを感じます。ヴァリエッタもそんなロマンをもたらしてくれる一つのモデルだと思います。随所随所で見えるこだわりと控えめな煌びやかさは、シルビアの中でもヴァリエッタとしてのオリジナリティが光っているような気がします。
2年のみの販売で総生産台数も1120台だったこともあり当時もそこらへんであちこち見かけるということはなかったですが、現在中古車市場ではさらにかなり数が少なくなっています。しかしまだ現段階ではプレミア価格までは付いていません。100万円から200万円ほどで購入できます。ただ今後さらに数が少なくなってきて超希少車になってきたら、価格が高騰することが考えられます。メタルルーフを閉じていたとしても、古さは感じさせませんが街中でも目立って仕方ないというオーナーの声も聞きます。この快感はやはりヴァリエッタを持つ人にしか分からないでしょう。ただのスポーツカーにはないオーラが彼にはあるということでしょう。
今後乗る機会もかなり珍しくなってくるでしょう。購入するとなると燃費面や使い勝手、年式も高いので維持費面にも勇気がいるかもしれませんが逆に購入できる最後のチャンスにさしかかっているということであり、せめて是非試乗できる機会があればもうこの先乗る機会がないかもしれないと思うと是非乗ってみてほしいですね。
[ライター/A. Oku]