このたび私儀はSUVラボ所長の職を解かれ、市井の「いちSUV愛好家」に戻ることになった。まぁもともとコンプリートリー市井の人であるため、所長職を解任されたからといって私儀の生活に何らの変化は生じないわけだが、いずれにせよ「SUV談義」もこれが最終回である。
最終回にあたって何を書こうか――と思案したが、観念的な能書きをつらつらとたれるよりは、何かこう「具体的なこと」を述べたほうが、SUV愛好家諸兄らのお役に立てるはず。
それゆえここでは、過去1カ月ほどの間に不肖私儀が試乗した各種SUVについての「ひとことコメント」を羅列していきたいと思う。
クルマに対する感じ方というのは人ぞれぞれな部分も大であるため、わたくしのコメントがどれだけ貴殿のお役に立つかはわからない。だが「まったく役に立たない」ということもたぶんないはずゆえ、まあなんとなく気楽に読み進めていただけたなら幸いだ。
その1:ボルボXC60 D4 AWD R-Design
こちらは雪の北海道で試乗した。結論としては大変に素晴らしいプレミアムSUVであった。見てのとおりデザインはインテリアもエクステリアもかなりシュッとしている、というか非常にセンスがよろしく、特に内装の素材感には「さすが700万円級のSUV!」と感嘆させるものがある。
ごく低速なタウンスピードでは若干バタつくような感が無きにしもあらずだったが、ある程度速度が乗れば「快適」の一語に変わる。またドライブモードは、高速道路を走行中もデフォルトの「COMFORT」で十分と感じたが、よりステイブルで硬質な走りを好むのであれば「DYNAMIC」を選択してやると、すべての具合はほぼ完璧となる。
最高出力190psと最大トルク40.8kg-mを発生する2L直4ディーゼルターボエンジンは大変にパワフルかつトルクフルで、それでいて燃費も良好。JC08モード燃費は16.1km/Lであるが、北海道の大地を約1000km走っての実燃費も、燃費計によればそれに近いものであった。
唯一問題があるとすれば「価格」か。D4 AWD R-Designの車両本体価格は714万円。無論、その金額を出すだけのバリューはあるナイスなプレミアムSUVだが、「714万円というマネーは、貴殿にとってはどう感じられるマネーなのか?」という部分で最終的な評価が分かれるSUVだろう。カネがあるなら「買い推奨」である。筆者はカネがないため買わない(買えない)のだが。
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その2:トヨタ ライズ Z(2WD)
言わずと知れた、今売れに売れているコンパクトSUVであり、ダイハツ ロッキーのトヨタ版である。搭載エンジンは最高出力98ps、最大トルク14.3kg-mの1L直3ターボ。
結論としては、なかなか悪くないSUVであり、「売れに売れてる」という理由はよくわかる。つまり、けっこう安いのにまあまあ良く走って、まあまあカッコ良くて、装備類もけっこう充実しているということ。「ゲタ」として考えるならかなりのモノである。
ただし、「ゲタ」が欲しい人には強く推奨できるが、「ゲタ以上の何か」をクルマに求める人には、わたし個人としてはあまり勧めない。ところどころに垣間見えてしまう安っぽさ(というか値段相応の部分)が、どうしても気になってしまうはずだからだ。
まぁ他に何かステキなクルマを持っている人が、「そのほかにゲタとしてライズを買う」というのであれば素晴らしい選択肢だ。またクルマ(SUV)の動的質感にまったくこだわらないタイプの人も、大満足できることは間違いない。
しかしそうでないのであれば、新車のライズを買うお金を頭金にして、もうちょっといいSUVの高年式中古車を買うほうがシアワセになれるのではないかと、わたし個人は思っている。
その3:マツダ CX-30 XD L Package(4WD)
これはCX-30というよりも、乗ったグレードが悪かった。
一般的なガソリンエンジン+FFのCX-30はなかなか悪くないSUVだと思うのだが、この1.8Lディーゼルターボは1900rpm以下のトルクがスッカスカで、なおかつ4WDということで車重もけっこうあるため、とにかく街乗りでの乗り味があまりよろしくないのだ。
高速道路などでそれなりの速度に達すればまあまあいい感じなのだが、だからといって「圧倒的に素晴らしい! やっぱディーゼルターボっていいな!」みたいな感慨があるわけでもない。
それゆえ、わざわざちょっと高いお金を出して買う意味はないグレードであると言うほかなく、マツダCX-30を買うのであれば「ガソリンエンジンのFFがおすすめですよ」と、SUVラボの元所長としては断言させていただく。
その4:スバルXV Advance
こちらについては近々に別媒体で詳細を書く予定になっているため、「ほんのひとこと」のみ述べさせていただく。
パワーユニットは、自然吸気の2L水平対向4気筒に小さめのモーターも加えたいわゆるマイルドハイブリッドだが、大変に素晴らしい走りを披露してくれるSUVである。シュアな走りを好むSUV愛好家各位は絶対に注目すべきクルマのひとつであろう。
ただし車体後部にバッテリーを搭載している関係で荷室容量が小さくなり(というか天地が短くなり)、燃料タンク容量も少なくなっている。だがそれでいて、燃費が圧倒的に向上したわけでもない。
そのあたりが「SUVとしてはどうなのか?」という疑問を生む場合もあるはず。この荷室とタンク容量が自身のライフスタイルに合っているかどうかだけは、事前に慎重に確認されたい。
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以上である。わたしはこの「SUVラボ」から消えるが、スバルXVの現行前期型に乗る「SUV愛好家」としてのわたくしが消滅するわけではないので、どこかの道路で貴殿らのSUVとすれ違うこともあるだろう。
その際には何らかのアイコンタクトを送っていただければ、極力わたくしも、それに応えたいと思っている。
では、さようなら。
[ライター/伊達軍曹]