トヨタMR-Sは1999年にトヨタがリリースしたコンパクトライトウェイトミッドシップオープンスポーツカー。既存の技術を応用して作られたオープンスポーツカーMR-Sはコストパフォーマンスに優れたピュアドライビングマシンです。販売開始当初は5速MTのみのラインナップでしたが2000年にシーケンシャル5速MTを追加しました。これによりAT限定免許でもピュアスポーツドライビングを楽しむことができるようになりました。
2002年にマイナーチェンジを行いMTモデル・シーケンシャルMTモデルどちらも6速化。その後、時代の変化やスポーツカー市場が下火になったことにより2007年の1000台限定特別仕様車を最後に一世代限りで販売が終了してしまったオープンスポーツカーがMR-Sです。今回はトヨタ最後のオープンスポーツカーMR-Sの魅力と実力について改めて探っていきましょう。
一世代で終わってしまったトヨタのオープンスポーツカー
1999年にデビューしたトヨタのピュアオープンスポーツカーMR-Sは全長3,885mm全幅1,695mm全高1,235mmで5ナンバーに収まるコンパクトサイズ。全長に対してホイールベースが2,450mmと長く前後オーバーハングを切り詰めたスタイルが特徴です。前輪駆動ユニットを座席後方に移しミッドシップレイアウトとし後輪を駆動させるMRを採用、組み合わされるトランスミッションは5速MT。新開発のオープンボディフレームは骨格断面を大型化しクロスメンバーを効果的に配置することで軽量化と高剛性化を実現。車両重量は1,000kgを下回る重量になりました。ミッドシップに搭載されるエンジンは1.8L直列4気筒、最高出力140PS/6,400rpm最大トルク17.4kgm/4,400rpmを発生させます。オープンスポーツカーとしてみれば排気量は小さく非力なパワーユニットですが軽量化と低い車高、ソフトトップを採用したことによる上半身の軽量化によって軽快な走りを見せてくれます。重量物が車両の中心に集中していることとオーバーハングを切り詰めたことにより意のままに鼻先をスッと変えられるピュアなハンドリングがMR-Sの持ち味です。
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ユーティリティではシートの後ろに小物入れがあるだけで走ることや操ることをメインに考えられた設計、割り切った作りになっています。デビューから1年後の2000年。MR-S最大の特徴とも言える出来事が起こります。それは、国産量産車として初のシーケンシャルMTを搭載したモデルを販売したこと。このシーケンシャルMTはクラッチ操作の必要性がなく、シフトレバーもしくはステアリングのシフトスイッチによりギアを変えることが可能。MR-Sに搭載されているMTを電子制御で変速するシステムを海外から調達することで実現しました。海外から変速制御ユニットを調達することが珍しく、シーケンシャルMTを量産車に初めて搭載する挑戦的なモデルとなりました。このシーケンシャルMTはAT限定免許でも運転することができるため購入層の拡大だけでなくレーシングカーさながらのシフトを楽しむことができる面白みのあるトランスミッションです。2002年にマイナーチェンジが行われデザインの小変更とトランスミッションの6速化が行われました。ボディ剛性の強化やインテリアの変更などが施され最終的に車両重量が30kgほどプラスされてしまいましたが軽やかに走る楽しさは健在。
スタイルは最終型まで大きな変更はなく、低くフラットなボディライン、上目遣いのように配置されたライト類がMR-Sらしさを主張し愛嬌すら感じられます。インテリアは水平基調で平らに広がるダッシュボード。タコメーターを中心に配置された3眼メーターがスポーツカーらしさを引き立て、ソフトトップを開ければ無限に広がる自然の空気を感じながらをドライビングを楽しむことができます。スピードを出して飛ばさなくてもレーシングカーのようなシフトフィールや開放感を感じられるピュアハンドリングオープンスポーツカーがMR-Sなのです。扱いやすいサイズと素直なハンドリング特性を持ったドライビング、AT限定免許でも運転することができる間口の広さ、そして既存のメカニズムを使ったことによるコスト削減で手が届きやすいライトウェイトミッドシップオープンスポーツカーであったにも関わらずスポーツカー市場の低迷などの理由により販売台数が伸びず2007年に台数限定特別仕様車をリリースして製造を終了しました。これほどまでに挑戦的でコストパフォーマンスに優れたオープンカーはMR-S以降登場することはありませんでした。
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おおよそ7年にわたり製造販売されたピュアオープンスポーツカーMR-Sですが、MR-Sに乗ってみたい、シーケンシャルMTを操りたいのであれば中古車を狙うしかありません。現在(2019年2月時点)MR-Sの中古車は200台ほど出回っています。中古車の車両本体価格は約10万円~200万円ほどです。中古車の中にはフルカスタムを施した車両もあり状態によっては300万円を越える価格でリセールされています。新車販売価格が168万円~であることを考えると新車販売価格のおおよそ2倍近くの価格がついていることになります。現在ではプレミア価値が付いているということですね。数あるMR-Sの中でも今回のオススメは2002年のマイナーチェンジ以降、6速シーケンシャルモデルがオススメです。オススメの理由は国産車では珍しいシーケンシャルMTを採用していること、マイナーチェンジによりボディ剛性の強化とギアが6速化されたことでシフトレンジが広がったためです。このオススメ条件になると50台程度に絞り込むことができます。
MR-Sはオープンボディであることから修復歴のない個体を強くオススメします。一般的にオープンボディはクローズドボディよりも剛性が下がります。フロアまわりの強化はされているもののフロアまわりの修復がある場合、MR-S本来のポテンシャルを発揮できないことが考えられます。よって修復歴がない車両を選ぶようにしましょう。さらにMR-Sはソフトトップを採用しています。ソフトトップの状態、つまり経年劣化や雨漏りなどがないかどうかのチェックも忘れずにするようにしてください。
〈オススメまとめ〉
・2002年のマイナーチェンジ以降
・6速シーケンシャルMT
・修復歴なし
・ソフトトップの状態チェック
トヨタ最後のオープンスポーツカーMR-S
トヨタオリジナルのオープンカーはライトウェイトミッドシップオープンスポーツカーMR-Sを最後にトヨタから販売されるスポーツカーおよびオープンカーの歴史が途絶えました。ましてやミッドシップレイアウトのモデルは現在(2019年2月時点)もトヨタのラインナップに存在していません。MR-Sはトヨタ最後のオープンスポーツカーと言われるのはこのような理由からです。その後トヨタは2012年に86の販売を開始しましたがスバルとの共同開発による水平対向エンジンを搭載したモデル、生産に関してはスバルが担当をしています。
2019年1月にはスープラ復活が話題になっていますがBMWとの共同開発であることを考えるとトヨタオリジナルのライトウェイトスポーツカーやオープンスポーツカーは今も無いと言えるでしょう。トヨタファンからすればトヨタが作る完全オリジナルモデルの復活を期待しているはず。トヨタの豊田章男社長はレーシング活動やスポーツカーおよびスポーティーカーのラインナップに力を入れています。是非この動きからオープンカーの復活も視野に入れていただきたいですね。
[ライター/齊藤 優太]